第三回「大学の経営ビジョンを考えるⅡ:報告」

 大学経営の起点となるのは「大学の経営ビジョン」です。前回はそのⅠとして、企業などにおける経営ビジョンと比較して論じ、大学の経営ビジョンの特異性を浮き彫りにしながら一般論についてお話ししました。今回の「大学の経営ビジョンを考えるⅡ」では、具体的な実行施策を提示し議論しました。経営ビジョンが、時々散見される単なる“絵に描いた餅”にならないようにするためにどうすればよいかを、具体的に考えることが今回のテーマです。

 まず、大学の現状を的確に認識することが必要です。そのための5項目として、(1)入試と就職。(2)教育・研究における質の保証。(3)政府の政策に呼応した事業展開。(4)知の公開。(5)コンプライアンスの徹底。を取り上げました。事例やデータを示しながら、現状認識をビジョンの実施計画や戦略に反映させるために必須となる視点や、データ分析上の留意点について私見を述べました。

 次に、それぞれの大学の置かれた状況によって取り上げる、例えば、組織の再編などの項目を除き、経営側の視点で必ずビジョンで取り上げなければならない主要な5つの課題として、(1)健全な財務。(2)適正な人事と採用計画。(3)長期展望に基づく施設整備。(4)ブランディング戦略。(5)コンプライアンスの徹底。を挙げ、具体的な戦略と施策について議論しました。

 また本には書いてありませんが、営利の追求とは少し遠いところにある大学における業務の質の向上や人事の考え方について、QC活動で知られるDemingの哲学や手法の導入についての私案を提案しました。大学経営の今後の課題であると思っています。

 環境の変化に呼応した組織風土の変革こそが、本来の競争力の源泉です。まず、納得できる経営ビジョンを定義し、建学の理念を柱に据え、今すぐに施策の実行に着すること。そして、最後はトップの高い志で、経営ビジョンを推進することが経営ビジョンの要諦と考えています。

 次回からは2回にわたって「実践!中退予防」を取り上げます。中退予防はすべての大学において喫緊の課題です。“実践”する中から見えてきたこと、すぐにできる有効な施策についてお話しします。

 

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